クリミアの王妃

 

「私の格好は可笑しくないか?正直に言ってくれ。」

「大丈夫ですよ、王子。」

「しかし。しかし、皆が私を見て笑っているような気がしてならん。」

「自意識過剰ですよ。王子。ここは、大陸一の大国クリミアの首都ですよ。ウチの国などとは、人間の数が違うのです。当然色んな人が居るし、色ん な考え方がある。誰も他人の趣味なんかにイチイチ構っちゃいませんよ。」

「そ・・・そうか・・・。」もうすぐ11歳になる、大陸でも超のつく田舎にあるちっぽけな国アルテミスの王子オメガは、気の毒なほどカチンコチンになっていた。

 生まれて初めて見る大都会。

 行きかう者はどんなに身分が低くても、自分よりはるかに垢抜けた格好をしている。周り中が自分の野暮な格好を笑っているような気がして、どこかで笑い声が起きる度に、びくびくと辺りを見回す。

(・・・お気の毒に。)馬に乗って活気のある市場を歩いているだけで神経を磨り減らしている幼い主人を、馬の轡を引きながら、38歳のアルテミス一の騎士オルフェは、一生懸命励ました。

 3日前に、まだ若い国王陛下が脳溢血で倒れることがなければ、王子がここに居ることもなかったのだ。

「・・・・・・。」オルフェは溜め息を漏らした。

「済まないな。オルフェ。私はどうしようもない主人だ。」

「と・・・とんでもない。」オルフェは慌てて否定したが、オメガ王子は目に涙を浮かべていた。その時。

「!」

 王子の馬の前に。いきなり子犬が飛び出してきた。

「ギャン!!!!ギャンギャンぎゃんぎゃん・・・・・・!!!!」子犬も、初めて見る馬に驚いたろうが、いきなりボーイソプラノで吠えられた馬はもっと驚いた。そうでなくとも普段より遙かに神経質になっている主人を感じて、馬もピリピリしていたのだから。

「・・・・・・・・・・!!!!!」

 暴走はいきなり始まった。

「いやあああああああああああああああああ!!!!!!!」

 市場を抜け街を抜け。いつの間にか回りは木々のマイナスイオンも芳しい郊外の小さな森。

「たああああすけてええええええええええ!!!!!!」

 涙と鼻水でグチャグチャの顔でオメガ王子は暴走する馬の背に必死でしがみ付いたまま叫び続けた。

「死ぬううううううううううう!!!!!!あるふぁあああああああああ!!!!」

 一際大きな木の下を通り過ぎた時。

「!」ふいに頭上から何かが落ちてきた。背中に暖かいぬくもりを感じる。

「どうっ!どうっ!!!」オメガ王子の身体を包み込むように馬の背に跨ったその男は、馬を声で宥めながらタズナを引き絞る。

「・・・・・・・・。」

 馬は一瞬、棒立ちになり暴れる素振りを見せたが、さすがに走り続けて疲労困憊だったらしく、荒い息を吐きながら、結局男のタズナ捌きに従った。

「ようし。いい馬(こ)だ。いい馬(こ)だ。」男はオメガ王子の背中から長い腕を回して、馬の首を叩いた。それから。

「もう、大丈夫だぞ。ぼうや。良くがんばったな。」オメガのカチコチになった身体を、背後から抱き締めて頭を撫ぜてくれた。

「びええええええエエエエエエエエエエエエええん!!!!!!」オメガは弾かれた様に、背後の男に抱きついた。

「もう嫌だあっ!故郷(くに)に帰るうっ!!母上えっ!!ははうええええええっ!!!!」オメガは男の大きな腕の中で恥も外聞の無く泣き叫んだ。元々が父王が来るはずだった。その父王は病に倒れ、意識すらない。しかも、そんな状態の父を置いてこの国にハルバルやって来たのは、クリミアの国王の誕生日だからだった。弱小国の悲しさで、どんな時でも、大国のご機嫌を損ねる訳にはいかなかった。もし不興を買ったりすれば、オメガの国など明日には地図上から姿を消す。

「よしよし。大丈夫だ。大丈夫だ。それは、気の毒にな。無理することなかったのに・・・。」オメガは泣きながら、その辺の事情を見も知らぬ恩人に向かって話し続けた。突然始まった身の上話にも、背後の男は熱心に付き合ってくれた。そして、優しくオメガの頭を撫ぜ続けてくれていた。

「・・・・・・・。」

 ひとしきり泣き叫ぶと。さすがのオメガも段々正気を取り戻してきた。そして。

「・・・・・・・。」蒼白な顔で、抱きついている男を見上げた。自分はとんでもない事を口走ってしまったのかもしれない。

「いい子だ。アルテミスは強く立派な王子を持っておられるな。」自分の父と同じくらいの歳に見えるその男は。だが。溜め息が出るほど美しい男だった。長い漆黒の髪は軽いウエーブが掛かっている。それを無造作に背後で一まとめにしている。大きな男に思えたが、貧弱というのでは決してないが思ったよりはるかに華奢な身体付きをしいていた。髪と同じ黒い瞳。透けるように白い肌。女性的では絶対に無いが、すばらしく美しい顔立ち。

「・・・・・・・。」自分の国でこんなに綺麗な男を見たことの無かったオメガは、大きく口を開けて男を見詰めた。

「従者の方が心配しているだろう。急いで帰った方がいいな。」自分をあんぐりと見詰める幼い王子に苦笑しながら、男は馬の踵を返した。

 

 

「本当に、お怪我がなくて良かった。」

 オルフェは昨日から同じ言葉を繰り返してばかりいた。

「この上、王子にまで何かあったら・・・・・。私は。・・・私は。」

「こんなトコロでよせ!」オメガ王子は思わず忠実な騎士を叱った。オルフェはオメガ王子が消えた後、物凄く心配したらしく(当たり前だが)決して女々しい男ではないのだが、少し精神が壊れ気味になっていた。

 ここは、クリミアの城のゲストの控え室。今日のクリミア国王の24歳の誕生日に合わせて、世界各国からの賓客がゴージャスな誕生祝を手に集まってきていた。

(それにしても・・・。)オメガ用に与えられた、居室を見て彼は溜め息を吐いた。この部屋の様々な設え、飾られた調度だけでも、彼の城(アルテミス)の最もゴージャスな部屋より凄い。国の格が違うというのは、こういう事なのだ、とオメガ王子はつくづく思った。クリミア国王はまだ若干24歳だというのに。だがそれでも。彼はいくら貧しくても国民全てが知り合いのような、暖かい自国の方がいいと思ってはいたが。

「王子。昨日、王子を助けてくださった騎士の方ですが、お名前とか伺いましたか?」

「いや・・・。」ふいに。昨日の綺麗な騎士を思い出して、オメガは赤くなった。

「そうですか。あの折、私はあまりに取り乱してしまい、ちゃんとしたお礼ひとつ出来ませんでした。どこのどなたかが分かれば、是非、出来うる限りの事をしたかったのですが・・・。」

「・・・・ああ。確かに。うっかりしていた。私も、すっかり取り乱してしまって・・・・・。」こんな不義理を。あの騎士はきっとあきれているに違いない。オメガはいきなり落ち込んでしまった。その時。クリミア国王への謁見の準備が整ったと、従者がオメガたちを呼びに来た。

 

 

「・・・・・・・・。」

 オメガは見たことも無いほどきらびやかな廊下を通って、謁見の間に向かう。昨日にもましてガチガチになっていた。着ている服は、自分の持っている中では一番高価なモノだが、周りを彩っている美しいクリミア宮廷の紳士や淑女。他国の王族が身に付けているモノと比べれば、おそろしくみすぼらしい。

「・・・王子。王子、右手と右足が同時に出ています!」オルフェが小声で注意するのだが、オメガには最早、何も聞こえていなかった。

「・・・・・・。」慣習に従って、国王陛下の前にまで脂汗を流しながら歩み出ると、儀礼に従ったお辞儀をする。

「こっ。この度は・・・・・・・。へっ・・・陛・・・へへへへへへへへへへへへへ・・・・・。」口上を述べようとするのだが、あまりの緊張で言葉が続かない。

「・・・・・・・・。」謁見の間で、この見るからに田舎者の王子を見ていた、宮中の貴族たちは、一斉に笑った。

「・・・・・・・・。」オメガはあまりの失態に、顔を真っ赤にして下を向いた。目には涙が浮かび上がるが、必死に耐えた。彼は弱小国とはいえ、誇り高きアルテミスの王子なのだ。

「へ・・・・。陛下にお・・・おかれましては・・・・・・。めでたく・・・・・。」何度も何度も。零れかかる涙を抑えながら、生唾を飲み込む。

(・・・・オメガ王子・・・・。)脇に膝を付いて控えている、オルフェは彼こそが涙を零しそうだった。幼い王子の死に物狂いの奮闘に、胸が張り裂けそうだった。

「・・・・・・・・。」くすくす笑いは止まない。オメガは唇を噛み締めて、言葉を継ごうとした。と。

「笑うでない。この無礼者ども!」

 辺りを圧する、凛とした声が謁見の間に轟いた。

「・・・・・・・・。」オメガは思わず顔を上げる。自分より3段ぐらい高く設えてある、国王の椅子にゆったりと腰掛けた、若きクリミア国王は、銀色の短髪に銀色の瞳の身体の大きな美丈夫だった。美しく整った顔に微かな温かい笑みを浮かべて、オメガに声を掛けた。

「慌てる必要はありません。どうぞ、王子のペースでゆっくり仰って下さい。最後まで、ちゃんと聞かせて頂きます。」

「・・・・・あ・・・。ありが・・・・・・。」思いもかけぬ優しい言葉に、オメガの目から、涙が一粒零れた。慌ててそれを拭って口上を続ける。随分と気持ちは落ち着いていた。

「オメガ王子。お父上が大変な病に倒れられたとか、それなのに、わざわざのお越し。このクリミア国王、アルテミスの信義は永遠に忘れません。」

 王子の口上を聞き終わったクリミア国王は、心のこもった返礼を述べた。

「・・・・・・・。」オメガは胸がいっぱいだった。自分たちの持ってきた贈り物など、その他の方々に比べれば、数にも入らないようなもの。それなのに、父王の事まで気にかけてもらえるとは。感激で胸が熱くなる。

「あ・・・・あの・・・!」

「何ですか?」

「も・・・もう一つ、お祝いの品を・・・・。」予定に入っていた品ではないが、オメガは個人的に感謝の気持ちを伝えたくてたまらなくなっていた。

「・・・・・・?」

「は・・・母が・・・・・。」

 優しい母上が。

 先祖代々母親から受け継いできたペンダント。息子の嫁に渡すつもりだったというペンダント。高価なモノではないにしろ。お前の旅が無事であるようにと、お守りの気持ちを込めて渡してもらったペンダント。

「こ・・・・これを王妃さまに。みすぼらしいモノではありますが。我が家を先祖代々守ってきたものです・・・・。」

 クリミアの国王は、王妃をこのうえなく愛していると聞いたことがあった。

「感謝を込めて・・・・・。いえ。いつまでもクリミアに幸あるようにと。」

「・・・・・・・・。」

「お・・・王子っ!!!!ご・・・ご無礼を。国王陛下!」堪りかねたように、オリフェが口を挟んで来る。

「王子は田舎の子供で・・・・。詳しい事は何一つ知らないお子様で・・・・。」

「い・・・いや。そんな大事なものを。かたじけない。オメガ王子。」クリミア国王は美貌に明らかな困惑した笑みを浮かべていた。

 

 

「一体、どうしたんだ、オルフェ。」

「・・・・・・・。」オルフェは、控え室で難しい顔をしていた。

「・・・・王子を、混乱させたくなかったので申し上げませんでした。私の大失敗です。」

「な・・・何?」

「クリミア国王の・・・。王妃は男性です。」

「・・・・・え?」

「今のクリミアからでは、想像もつきませんが。かつてこの国がわが国と大差ない弱小国だった頃。大国に対抗するために近隣諸国とあらゆる縁戚 関係を結んだそうです 。」

「・・・・・・・・・。」

「現在の王妃は。もう現在は滅亡してしまった国の出身ですが。その当時はクリミアと関係が深く、友好関係にありました。その関係をより強固とするために現在のクリミア国王と王妃の国の王女が結婚することになったのです。しかし、その王女が不慮の事故で亡くなってしまい。その頃大国の脅威をヒシヒシと感じていた両国は、苦し紛れに王女と王弟を入れ替えたのです。つまり、亡くなったのは弟君の方だと。勿論。皆、それを 知ってはおりましたが、両国がそう言い張る以上、知らない振りをしておりました。当初は王妃も女装をしていらっしゃったようですが、最近はそうした必要も無く、公の席にも騎士の格好で出席なさるようです・・・。」

「・・・・でも、王妃なのか?そして王妃が男ということは、皆知っている事なのか・・・・?」

「まあ。世界中の暗黙の了解事項ということで。今となれば、クリミアに文句を言う国はありませんから。」

「じゃ・・・・。アクセサリーを王妃に贈るというのは・・・・。」

「イヤミに取られかねません・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

「あっ!王子!王子!!!!オメガ王子っ!」

 昨日からの緊張の連続と、思いもよらない大失敗に。オメガの神経は耐え切れず。ついに意識を失ってしまった。

 

「・・・・・・・。」

「気付かれたか。オメガ王子。」

「くっ・・・・クリミア国王陛下・・・・・!?」意識を取り戻したオメガを覗き込んでいたのはクリミア国王の美貌であった。

「いや。ペンダントのことを気に病まれているのではないかと、丁度お部屋の方を伺ったトコロ、王子が倒れられてお付の騎士の方が取り乱しておられたので、差し出がましいとは思ったのだが、当方でお世話させて頂いた。」

「・・・・重ね重ね・・・。まことに・・・・。まことに申し訳・・・・。私は、本当に何も知らない田舎者で・・・・。」オメガは穴があったら入りたいような思いだった。

「いや・・・・。いや、私とあれの関係が異常なのだ。オメガ王子の反応は正当だよ。」クリミア国王は苦笑した。

「今の状況なら、もうとっくに離婚していて当然なのだが。・・・・気が付いたら、もう絶対に手放せないほど私は王妃に惚れていてな。」

「・・・・・・え?」クリミアの王妃は国王より10歳年上だと聞いていた。そんな10歳も年上のおっさんに?年下ならまだ理解出来るが。オメガは思わずまじまじとクリミア国王を凝視してしまった。変態?こんな超がつくハンサムなのに。勿体無い。

「・・・・結婚したのは、私が16歳の時だった。当時、私も思ったよ。冗談じゃない。10歳も年上のおっさんを嫁に貰う位なら国が滅びた方がまだマシだ、とな。」オメガの考えを読んだかのようなクリミア国王の言葉に、王子は赤くなって俯いた。

「・・・・だが。」クリミア国王は遠い目をした。

「色んな事があった。国家存亡の危機に立たされた事も1度や2度では無かった。実際、王妃の国は滅亡してしまったし。王妃がいなければ、クリミアとてどうなっていたか分からない。あれは図抜けて優秀な騎士だった。戦略も交渉ごとも。ありとあらゆる事を私は王妃から教わったようなものだ。・・・・究極の政略結婚だったし、子供は望むべくもない。最初から側室は持ち放題だったのだが。」

 クリミア国王は、悪戯っぽい顔でオメガを見た。

「あれは・・・・。凄い美男でな。奴より美しいと思う女には、ついに巡りり逢えなかった。・・・貴殿も綺麗な男だと思っただろう?オメガ王子。」

「え・・・・・?」ふいに。オメガの脳裏にイナズマのように。昨日、自分を救ってくれた騎士の姿が浮かんだ。まさか。

「・・・・未だに、弱小国だった頃のクセが抜けずに、一人でふらふら出歩いてばかりだ。」クリミア国王は顔を顰めた。だが、何となく嬉しそうだった。

「・・・・気が付いたのか?オメガ王子。」

 その時。昨日の綺麗な騎士が、部屋に入ってきた。両手にいろいろな食料を持っている。

「腹が減っただろう?お付の騎士の聞いたところでは、ここのトコロ、ろくに食ってないらしいじゃないか。お父上の事が心配だろうし、緊張しているのもわかるが、人間、食うものを食っとかんと、力が出んぞ。」

 そう言って、騎士はベッド脇の椅子に腰掛けると、バナナの皮を剥いて、オメガに差し出した。

「食え。」

「・・・・・・。」いりません。とは、とても言えそうにない雰囲気だったので、オメガは黙ってそれを口に入れた。

「いい子だ。」騎士は美しい顔をほころばせた。本当に綺麗だとオメガは思った。クリミア国王の言った事がわかるような気がした。

「国王陛下。てめえはとっとと、謁見の間に帰るんだな。じいが、真っ青な顔で探しまくっていたぞ。」騎士はクリミア国王を横目で見る。

「やれやれ。」クリミア国王は立ち上がった。それから、オメガの耳元に口を寄せて、騎士に聞こえないように、小さく呟いた。

「・・・・惚れたのは私で。我慢出来ずに、結局レイプまがいの真似をする事になった。王妃は今でも許してくれない。毎日毎日、愛を請う日々さ。」

「・・・・・・。そうですか。でも国王陛下はお幸せそうです。羨ましい気がします。」オメガは赤くなって俯いた。

「・・・・・・・。今回はもうお会い出来ないかもしれないが、またクリミアに来て下さい。今度は遊びに、な。」

 クリミア国王は、端正な顔に心底嬉しそうな笑顔を浮かべると、さっそうと部屋を出て行った。10年経てば。自分もあんな格好の良い国王になれるだろうか、オメガはそのウシロ姿を見つめながら思った。

「オメガ王子。これ。ありがとな。しかし、大事なモノなんだろう。本当に貰っていいのか?」

「あ・・・・。」最初、騎士が入ってきたときに感じた違和感。その正体がやっとわかった。彼は騎士の格好に、オメガが贈ったペンダントを付けていたのだ。ペンダントは騎士の服装には全然似合っていない。浮きまくっている。

「・・・・・・・・・。」

 オメガは感激で、言葉が出なかった。

 騎士は微笑むと、またバナナを剥いてオメガに差し出した。

 

 

「・・・・・最初から最後まで、大変な旅でしたね。オメガ王子。本当にお疲れ様でした。ご立派でしたよ。」

 クリミアを後にして、アルテミスに向かう道中で、オルフェはオメガ王子を気遣うように、そう言った。

「・・・・大変だったけど。良い事もあった。」オメガは振り返った。

 クリミア国王は、またと言ってくれたが。もうあれほど親しく口を利くような事はないだろうと、オメガは思っていた。クリミア国王は嘘を付いた訳ではない。だが、その言葉を無邪気に頼るようでは、弱小国の王子は務まらないのだ。

 オメガは正面に向き直ると、オルフェに笑いかけた。

「はやくアルテミスに帰ろう。父上や母上に話したい事がたくさんある。」

「はい。」

 まず母上にペンダントの事を謝らなければ。そして。話そう。

「・・・・・・・。」オメガの頬に意識しない微笑が浮かんだ。

 クリミアの美しく優しい王妃のことを。

 

−fin−

 結構長くなっちゃったな。全体的にはもっと短くするつもりです。

 この。究極の政略結婚で、男同士が夫婦にならざるを得なかった、しかも、世界中が知ってはいるが、知らない振りをしているというシュチュエーションは、前から書いてみたかったモノです(気が付いたら、惚れていたというのも・・・。笑)。

 ま。こういう風にテキトーに書いたものを、気楽に公開していくつもりですが。気に入った話や、続きが読みたくなった話などは教えて頂くと嬉しいです。よろしく。