クリミアの王妃 2

 

「ようようよう。もっと、クリミアの都の話を聞かせてくれよ。」

「3ヶ月も前の事を。たいがいお前もしつこいな。いっぱい話してやったじゃないか。それに見ての通り今は忙しい。後だ。アト!!」

 オメガ王子はアルテミス城の広大な敷地内にある畑から、とうもろこしを収穫しながら、傍らに立つ自分より頭ひとつ高い影にに言った。

「けーーーーち。王子のケチ!」

 同じように、とうもろこしを収穫しながら、国一番の騎士オルフェの一人息子、今年14歳になったルミナスは口を尖らせた。ちなみにオメガ王子は10歳。もうすぐ11歳である。

「ケチとは何だ。王子に向かって。臣下のくせに。」

「そりゃ、悪うございました。畑の王子様。」

「・・・・・・・。」幼い頃から、城でいっしょに育った兄弟のような幼馴染。まったく遠慮がない。ムカついたオメガは喧嘩腰でルミナスに叫んだ。

「わかったよ!そうだな!都の騎士は流石に垢抜けていて美々しく。逞しく。お前のような年齢の見習い騎士でも、大根抜いたり、橋の補修工事したりはしてそうに無かったよ!」

「何だと、この野郎!!!みんなこの国が貧乏なのが悪いんだろうが!言ってみれば、お前らアルテミスの王族の政治力に問題があるんじゃねえのか!?」

「・・・・何だと!父上やお爺さまを馬鹿にする気かっ!?ああ。クリミア国王は、臣下に恵まれていて羨ましいったら。」

「何いっ!?」

「・・・・・・・。」二人は互いに収穫したとうもろこしを相手に投げつけた。そして、そのまま一気に相手に掴みかかろうとした時。

「・・・・はい。それまで。」

 いつの間にか背後に忍び寄って居たらしい背の高い男に、二人はいきなり首根っこを掴まれ、地面から吊り上げられた。

「だ・・誰だっ!?」オメガは苦しい体制ながら、顔を捻じ曲げて男を見ようとした。

「てめっ!猫のコじゃねえんだ!離しやがれ!!!!」ルミナスはじたばたと暴れた。

「あっ・・・・・・!!!!!」男の顔を見た途端。オメガは動きを止めた。

「・・・・久し振りだな。オメガ王子。」

 二人を両腕に吊り下げたまま。にこやかに微笑む美貌は。

「く・・・・・・。クリミアの・・・・・。王妃さま・・・?」

 

 

「一体・・・・・。どうしたんですか?どうやって城に入ったんですか?何か我が国に御用でも?」

「・・・城門に番兵も誰も居なかったぞ。平和な国のようで羨ましいが、やっぱりちょっと無用心だな。」王妃は用向きに触れる事なく、そう言った。

「・・・・・今は。畑で育てたものの収穫期で・・・。国中が大忙しで・・・・・。」オメガはさすがに恥ずかしくて、赤くなった。

「ああ。途中で、国中に号令を掛ける勢いで畑のなかで奮闘していらっしゃるご婦人を見掛けたが、お母上か?ご立派なものだ。」

「・・・・・はあ。母上は、国一番の働き者でして。」オメガはクリミアの宮廷の淑女たちを思い出して、やっぱり少し赤くなったが、ご立派だという王妃の言葉に嘘はないとも思った。

「アルテミスは本当に田舎で。王妃さま驚かれたでしょう?」おずおずと言うオメガ王子に。

「いや?クリミアも、ついこの間まで似たようなモノだったよ。」答える王妃は、美しい顔に郷愁に似た表情を浮かべていた。それで、ピンときた。

「・・・・・・家出ですか?」

「・・・・・・・・。」

 鋭すぎる。

 切り込み方も、これ以上は無いほどに鋭角的だ。

「他国に嫁いだ、父上の妹君が、時々王妃さまのようなお顔をされて、アルテミスに帰っていらっしゃる事があります。」

「・・・・・・・。」王妃は黙ってオメガ王子に背を向けた。

「・・・・クリミア国王と喧嘩でも?」オメガ王子は容赦なく追い討ちを掛ける。

「おい!バカ王子。」傍に控えていたルミナスが、オメガ王子に低い声を掛ける。

「・・・・・そういう事は根掘り葉掘り訊くモノじゃねえ。どっちかっていうと、見て見ぬ振りをする類のモノだ。このガキ!」

「ガキだと!?あ。でも。そうか・・・。オトナにはイロイロな事をはっきり言ってはいけない時があると、母上も言っていた。」

「そうだ。オトナにとっては、なあなあとか、まあまあとか。そういうのが都合が良くて上品なんだよ!」

「・・・・・・・・・。」二人としては声を抑えているつもりなのだが、丸聞こえである。

 王妃は無言で、抜けるように晴れ渡った秋空を見上げた。雲ひとつない。心洗われるような晴天だった。

「いい天気だなあ。」王妃は明るい声でそう言った。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」悪ガキ二人も、つられて空を見上げる。だが彼らにとっては見慣れた青空が広がるだけ。感心するほどのモノではない。

「・・・・・お父上の具合はどうだ?」何とか態勢を立て直した王妃が、振り返った。

「あれ以来、意識は戻りませんが。命を永らえていてくれるだけで、有り難いと思っています。」

「・・・・・・オメガ王子は、ご立派だ。ウチの宿六(やどろく)に聞かせてやりたいよ。」

「・・・・・・王妃さま。このような田舎で良かったら、どうぞお好きなだけいらっしゃって下さい。至りませんが、出来るだけのお世話をさせて頂きます。」

 オメガ王子は心からそう言った。

 オメガは王妃の故国が滅びたという話を思い出していた。彼には、叔母上のように泣いて逃げ帰る実家も無く、慰め諌(いさ)めてくれる肉親も居ないのだ。それはきっととても寂しい事だろう。

「・・・・・・・ありがとう。オメガ王子は優しいな。」王妃は苦笑すると、オメガ王子の金色の巻き毛をくしゃくしゃとかき混ぜた。

 

 

 二人は、少しアルテミスの観光をしたいという王妃について、城周辺のあちこちを回っていた。王妃は一人で良いと言ったのだが、二人がこの綺麗な騎士について行きたかったのだ。

 普段都会に居る王妃は、人工的なものがあまりないアルテミスの風景が気に入ったらしく、二人から見れば、何でもないような場所で立ち止まっては、そこから見える光景をぼーっと眺めたりしていた。そして退屈している二人に気付くと。

「失ってしまわないと、分からない事は多い。」苦笑しながら、そんな事を言った。

「・・・・・・・。」二人には正直王妃の言う事は良く分からなかったが、何となくオトナの哀愁のようなものを感じてドキドキした。

 

「おいっ!クリミアの王妃って?ホンモノなのか?」ルミナスが小声でオメガ王子に囁く。

「そうだ。・・・ついでに言うなら、あれが本物の騎士というモノだよ。」同じく小声で答えたオメガだが、何となく胸を張った。

「そ・・・そうか。そうだよな。あんなに華奢で優雅に見えるのに、俺たち二人を腕に抱えても微動だにしなかったもんな。やっぱり凄え力だよな。ちゃんとした騎士は違うな。」

 ルミナスはしきりに感心していた。オメガは何だか誇らしくて顔を赤くした。自分がどれだけクリミアの王妃が素晴らしい騎士かを説明しても、「だって所詮はオカマだろう?」とか「どうせ王族のお遊びで、剣のひとつも持てやしねえ。」などと言っていたルミナスが、彼を憧れの眼差しで追っている。

「そ・・・それに。凄く好い男だよな。美形・・・?っていうか。何か、もっと女っぽいのかと思っていたら、全然そんな事ないな。どっちかというと、カッコイイって部類だよな。」

「うん。」実際、王妃に女性っぽいと思うトコロはひとつも無かった。敢えてあげるとすれば、アルテミスではまったく見掛けないその腰まで届く長髪だったが、無造作にひとつにまとめられた少し癖毛の黒髪は、王妃の甘いところの無い峻烈な美貌にとても良く似合っていた。それにクリミアでは長髪の男性を見掛けた事も多かったので、クリミアではそれほど特異な事でも無いのだろう。

 そんなことを考えていた時。

「オメガ王子。」

 ふいに。二人の少し前を歩いていた王妃が声を掛けてきた。

「・・・・・こちらへ。騎士殿も。」

「は・・・はい。」

「?」

 二人が王妃に駆け寄る。と。ほぼ同時に。

「・・・・・・!」

「!」

 王妃は、腰の大剣を抜き放った。

 黒い10人ほどの人影が3人を取り囲んだのは、その瞬間だった。

「何者だ?狙いは私か?それとも王子か?」

 王妃が二人の少年を背後に庇いながら、鋭い声を出す。

「・・・・・クリミア王妃。私をお忘れですか?」黒い影の一番後ろに居た長身の男が、静かにそう言った。

「・・・・・・・・。」その声を聞いて、王妃は小さな舌打ちを漏らした。

「・・・・・これは、千載一遇の好機(チャンス)だ。違いますか?」男は顔の大半を黒いベールで覆っていて、顔かたちはほとんど分からない。たが、それから覗く両眼に浮かぶ凄まじいほどの妄執の色を見て、王妃の背後の少年たちは震え上がった。

「・・・・・・・。」王妃は無言を貫いて、答えない。大剣を腰の前に構えた。

「・・・捕らえろ!出来るだけ傷をつけるな。急所を突いて倒すんだ!」男が叫んだ。

 男たちが一斉に襲い掛かる。だが。

「その程度の覚悟で・・・・!」王妃の低い声とともに、大剣が一閃した。

 優雅に舞った王妃の剣が、再び元の位置に戻ったとき。

 黒い影は3分の1が、血煙を上げて地面に倒れた。

「・・・・この俺を倒せると思ったら、大間違いだ。」王妃は美しい顔を。ほんの少し紅潮させて、微かに笑った。

「・・・・・仕方ない。網を出せ。」男は小さく呟いた。

 男たちは魚を獲る投網のようなモノを王妃に向けた。

「・・・・王妃さま!」オメガはほとんど無意識に、王妃の前に出た。

「お逃げ下さい。私とルミナスで、出来るだけ喰い止めます。」

 少年たちは決死の覚悟だった。だが。

「有り難いが。10年はやい!」オメガ王子の傍らを。疾風のように声が通り過ぎた。

「・・・・・・!」王妃は投網を持った男たちに、凄まじいスピードで突っかけた。そして舞うように。

「うわっ!!」

「グアっ!!!!!」

 剣が煌めく。その。この血なまぐさい場面には似合わない優雅さに、思わず見惚れてしまって、オメガは男たちの一人が自分に腕を伸ばした事に気付かなかった。ルミナスが気付いてオメガを守ろうとしたが、あえなく男に吹っ飛ばされた。

「ルミナスッ!!あっ!!!」気付いた時には、その男の腕の中で、喉元に剣を突きつけられていた。

「王妃っ!剣を捨てろっ!!!」男は叫んだ。

「王妃様!逃げて下さい!!」オメガが泣きながら叫んだ。もし、王妃が剣を捨てそうな素振りを見せたなら、自分で命を絶とうと。そう思った。その時。

「ぐっ・・・・・・・。」オメガを抱えていた男が、奇妙なうめき声を上げた。

「・・・・・・・!」

 振り仰いだ男の顔に。

「うわああああああ!!!!」

 剣がはえていた。男の腕から開放されて倒れ掛かるオメガをがっしりした逞しい腕が支えた。

「ああ。・・・・・クリミア国王陛下。」

 美しい銀色の短髪。男らしい美貌に、憤怒の形相を浮かべて、クリミア国王は前方に立つ長身の男を睨み付けていた。その背後から、クリミアの騎士たちが数十人が躍り出る。

「・・・・・・・くっ!引けっ!引けっ!!!」男たちは、叫んだ。

「・・・・おのれっ!無念・・・・。だがあきらめませぬぞ。王妃!」顔をベールで覆った長身の男も、無念さをありありと覗かせる形相を見せていたが、部下らしい男たちに引き摺られるように去って行った。

「・・・・・・・大丈夫か?オメガ王子。」クリミア国王は、騎士たちに深追いしないように指示しながら、オメガを抱き締めた。

「迷惑を掛けて申し訳ない。」

「い・・・いえ。私は大丈夫です。ルミナスは・・・。」オメガは慌てて幼馴染を探す。

「・・・・俺は大丈夫だ。王子はケガはないか?」ルミナスは唇から血を流しながら、オメガの身体を探った。

「オメガ王子!!」王妃が剣を鞘に戻しながら、大慌てでオメガに駆け寄ってきた。が。

 ぱあん。

 凄い音とともに、クリミア国王が、王妃を平手で殴った。

「な。何しやがる!?」

「馬鹿野郎!!!一歩間違えば、オメガ王子は死んでいたぞっ!!!」

「ぐっ・・・・。」それに関しては言い訳出来ないと言った顔で、王妃は唇を噛んだ。

「書置きひとつで居なくなりやがって・・・・。どれだけ心配したと思ってやがる。」クリミア国王は泣きそうな顔で王妃を睨んだ。

「・・・・だから、心配するなと書いてあっただろう。」

「ふざけるな!危機一髪だったじゃねえか!もし。あの野郎にとっ捕まっていたら、どうなるか分かってんだろうな!」

「さあ。さっぱりわからん。」

「・・・・・だったら、教えてやる!」クリミア国王は、凶暴な表情を浮かべて王妃の腰に腕を回してを抱き寄せた。

「な・・・・・!ちょ・・・・!!!」

 うろたえた表情で、国王の身体を押しのけようとした王妃の唇に、クリミア国王が噛み付いた。

「・・・・・・・・!」

 少なくとも、オメガ王子にはそう見えた。クリミア国王が喰い付いたと思った途端に。周りに居たクリミアの騎士が大慌てでオメガとルミナスの両眼を手で覆ったのだ。

「ちょ・・・・!待て!おい!・・・・やめ!!」

 オメガは目を覆われたため音しか聞こえない。そして聞こえるのは、王妃の悲鳴と、何かを草むらに押し倒すような音。国王の荒い息遣い。そして。

「・・・・・・あ・・・あのあのあの。」

 オメガ王子は声を出したが、ルミナス共々クリミアの騎士に抱えられてどこかへ連れ出された。

「お・・・王妃さまは、国王陛下に何か、お仕置きをされているのではないですか!?お願いですから、止めてくれるように言ってください!!」

 オメガはクリミア騎士に食って掛かった。

「い・・・いや。お仕置きといえば、そうでしょうが・・・・・。」騎士たちは困惑した顔で、苦笑いを浮かべる。

「だって・・・。王妃さまの悲鳴が聞こえました。国王陛下に苛められているのではないですか?わ・・・私も一緒に謝ります。ですから・・・・。」

「い・・・いや。苛められているといえば、確かにそうかもしれませんが・・・・・。」再び騎士たちは困惑した顔で、苦笑いを浮かべる。

「いい加減にしろ!このカマトト!」オメガはいきなりルミナスに後頭部を殴られた。

「え・・・・!?」

「馬鹿っ!二人はキスしてたんだろう!10歳にもなって、間抜けな事言ってんじゃねえ!」真っ赤な顔でルミナスがオメガを罵る。

「ち・・・・違う!あれはキスなんかじゃない!父上が母上にするキスはあんな、あんな噛み付くみたいなモノでは無かった。そうですよね!」

 オメガはクリミアの騎士たちを振り仰ぐ。

「・・・・・・いや。キスといってもディープなモノから、軽〜いモノまでイロイロと種類が・・・・・。なあ。」騎士たちがモゴモゴと呟く。

「何、真面目に答えているんだよ。」ルミナスは、額に手を当てて、はーっ。と大きな溜め息を吐いた。

 

 

「危ない目に会わせてしまって、悪かったな。オメガ王子。騎士殿も。」

 夕暮れ。オレンジの夕日に照らされて、王妃は綺麗な顔に少しだけバツの悪そうな笑顔を浮かべていた。

「いいえ。次にお会いする時は、きっと王妃さまを守れるくらい強くなっておきます。」

「・・・・・・・ありがとう。」王妃は嬉しそうに笑った。その隣に立つ背が高く逞しいクリミア国王陛下も。

「・・・・・・・。」男同士だが。オメガには二人はとても似合いの一対に思えた。思わず微笑が零れるほどに。

「非公式の訪問だから、お母上には会わずに帰る。出来れば、無かった事にしてもらえると有り難い。」

 クリミア国王はオメガ王子に囁いた。

「はい。承知しております。」オメガは力強く頷いた。

 

「・・・・幼いのに本当に立派な王子だ。お前なんぞに嫁ぐハメにならなけりゃ、俺にも今頃あのくらいの息子が居たのにな。」

「・・・・頑張って産んでみたらどうだ?」

 二人は馬に乗って、日の落ちかかる街道を進んでいた。クリミア国王は一個大隊をこの先の大街道に待機させていた。クリミアに帰るには数日は掛かる。

「産めるわきゃ無えだろう!!それに何で俺が産まにゃならん!?」王妃は額に青筋を浮かべて怒鳴った。

「・・・・・・。」クリミア国王は小さく笑った。

「・・・・・っ。」叫んだ拍子に、王妃は小さく顔を顰めて、腰に手を当てた。

「・・・・・・悪かったな。」クリミア国王は小さく呟く。

「謝って済む事か!よりによって、オメガ王子の前で。」

「違う。お前がクリミアを出た原因の事だ。あれは、俺が悪かった。」

「ああ・・・・。」

「お前の言っている事が正しいことは、分かっていた。ただ、臣下の前だったし、いつまでもお前を乗り越えられない自分が悔しくてな・・・・。ついあんな事を言ってしまった。」

「・・・・・・お前は、もしアレが臣下の意見だったら、すんなり自分の非を認めたハズだ。だが、俺はお前の妻だからな・・・・。腹が立ったんだろうよ。」

 王妃は、遠くを見るように目を眇めた。

「・・・・・・・・。」その表情は、いつでもクリミア国王を不安に陥れるものだった。俺は一体いつまでこの男を自分の傍らに引き止めておけるのだろう。

「愛している。」

「何?」

「愛しているぞ。」そんな言葉は、王妃にとって何の力を持たない事はわかっていた。だが、それでも。

「馬鹿じゃねえのか。」だが。思いがけず王妃は国王に綺麗な笑顔を見せてくれた。

「・・・・・・・・。」クリミア国王も笑った。今はこれで良い。先がどうなろうとも、今、王妃は自分の隣で笑顔を浮かべているのだから。

「・・・・・いっそ、オメガ王子を養子にもらうか。」クリミア国王は、ふいに思いついた。

「くれる訳ないだろう。アルテミスの跡取りだ。」

「いや、聞くところによると、弟が居るらしい。」

「兄弟がいたとしても。長男は養子に出さない。」

「国が滅ぼされるかも、と思ったら、出すさ。」

「この・・・・・ケダモノ!」王妃は馬上から、クリミア国王の足を蹴っ飛ばした。

「・・・・・・・・。」驚いて棒立ちになりかかる馬を宥めながら、クリミア国王は豪快に笑った。そして。

 お前が本気で望むなら。俺は何でも出来る。神にも悪魔にもなってみせる。この。10歳年上の愛おしい王妃を見詰めながら、天下に並ぶもの無い権勢を誇るクリミア国王は、心の底からそう思っていた。

 

−fin−

 興に乗って、続きを書いてしまったけれど。

 何じゃこりゃ。ラブラブじゃん。男同士のくせに(笑)。

 オメガ王子。ちょっとイロイロな関係上、年齢が若干低くなっております。しかしカマトトってのは、死語では・・・・・?