HoLy night

 背中を向けた女が立っていた。

(ああ。またこの夢だ。)

 栞は、夢の中で、これが夢だと認識していた。

 女は。栞の母親だった。

 7歳の頃から毎日毎日、母親は栞の夢の中に現れた。

 背を向けていた母親が、振り返る。

 そして栞に近付いてくる。両手を伸ばして。

 もう顔カタチも、うろ覚えでハッキリしないというのに。夢の中で母親の浮かべている表情は分かるのだ。

 般若の形相。

「・・・・・・・・っ!!!」

 そして。女性のモノとは思えない大きな手が、栞の首に掛かる。力が掛かる。

(・・・・・・・!!!苦しいっ!!!!)

 栞がそう思った瞬間に、目が覚める。

「・・・・・・・・・。」

 気付くと。

 今夜は。栞は8畳の和室に敷かれた布団の上から、天井を見詰めていた。

 傍らの時計を見ると、もうすぐ朝の6時になるトコロだった。目覚ましをセットしてあった時間だ。

 栞はゆっくりと枕元を探ってメガネを手に取ると、それを掛けながら身を起こした。

 

 7歳の時。家族を失ってから、この夢は毎日観る。観なかった日は一日も無い。子供の頃は目が覚める度に怖くて泣いていたが、今ではもうスッカリ慣れてしまい、またかと感じるだけだった。

 

 何時まで経っても、自分の夢に現れる母親は。

 もしかすると、生き残った自分を憎んでいるのだろうか。栞はふと。そんな風に考えた。

 

「・・・・悪いが。クリスマス・イヴは仕事だ。」

 高村(たかむら) (しおり)は、ポツンと呟いた。

「ええっ!?」

 間宮(まみや) (とうる)は、大声で聞き返した。

「何でや!?イヴやで!?」

「イヴだから皆休みたくて、バイトが集まらないんだよ。」

 コンビニの雇われ店長をしている栞が、マジメな顔で諭すように間宮に告げた。

「・・・・・・・辞めてまえ。仕事なんか。」間宮が吐き捨てるように言う。

「・・・・・・・・・。」

 栞は溜め息を吐いて、間宮を見た。非難するような光がその目にあった。

「・・・・・・フランスの三ツ星レストランやで?支店とはいえ、予約は半年先までギッシリやったんや。それをツテやコネを総動員して無理矢理、席を確保してもろたんやで!!」

「・・・・仕方ないだろう。誰か別のヒトを誘ってくれ。」

「ちくしょうっ!!辞めてまえ!!コンビニの店長なんか!!お前一人くらい、俺が面倒見ると言うとるやないか!!!」

「そのハナシなら、俺も何度も断っただろう。お前に囲われようと思って、大阪に来た訳じゃないんだ。」

 間宮は舌打ちをした。

「・・・・・他の誰かを誘っても良えんやな。クリスマス・イヴに、あんた以外の誰かと過ごしても良えんやな!?」

「・・・・・・・・・・好きにしろよ。」

「ああっ!!そうさせてもらうわ!!俺に付き合うてくれる人間なら男でも女でもイクラでも居るからなっ!!!」

 間宮は立ち上がると、足音も荒く栞のアパートを出て行った。

 ガンガンガンガンと。

 表の階段を降りて行く、間宮の苛立たしげな足音が聞こえる。

「・・・・・・・・!!」

「・・・・・・・・。」

 表に控えていた、間宮の組の組員たちが何か言う声と、車のドアが閉まる音。やがて、エンジン音とともに、それが走り去る音が聞こえた。

「・・・・・・・・。」

 栞は立ち上がると、窓のカーテンをそっと捲った。去っていく間宮のベンツのテールランプの赤い光が間宮のアパートの前の道を右に曲がっていくのが見えた。

「・・・・・・間宮。」

 栞は小さく呟いた。

 

「可愛ゆうないっ!!!」

 間宮は、車内の後部座席で腕を組んだまま、吐き捨てた。

「何か。ありましたんか?イヴの話をしたんでっしゃろ。栞は喜ばんかったんですか?」

 助手席に居た加納が、振り返って間宮を見た。

「喜ぶ以前の問題や!!イヴは徹夜で仕事やそうやっ!!!」

「そりゃ、また・・・・・・。」

「あんな仕事・・・・。キツイばっかで、たいした金にもならんのに。何であないに一所懸命働くんや!!馬鹿ちゃうかっ!!」

「若頭。どんな仕事でも、バカにしたらあきまへんで。」加納は、間宮を嗜めた。間宮はヤクザのサラブレッドだ。普通の家庭の人間には分からない辛い目にもたくさん遭ってきているが、金の苦労だけはしたことが無い。間宮には栞の生き方は理解出来ないのだろう。

「・・・・・・・・・・。さっさと辞めれば良えんや。そしたら、俺が贅沢させたるのに・・・・・。大体、あんな小汚いアパートはさっさと引き払うて、俺のマンションで暮らせば良えんや。」

「若頭。」加納は眉間に皺を寄せた。

「・・・・コンビニの店長を馬鹿にしとるんやない。俺は、栞と出来るだけ一緒に居りたいだけや。」

「・・・・・・・・・・・。」加納は小さく、溜め息を吐いた。

 間宮の。ホトンド、初めてと言っても良い恋。間宮は、スッカリ夢中になっていた。恥ずかしいコトを平気で言う。だが、そんな間宮が多少羨ましくもあった。そんな風に恋を出来る間宮が。

「・・・・・・・・・。」

 加納はもう一度。溜め息を吐いた。

 

 

「いらっしゃいませ。」

 栞は店の自動ドアが開いたのに気付いて、大きな声を掛けた。

 訊くところによると、こうして声を掛けられるコトが、多少は万引きの抑止力になるのだそうだ。だが。

「・・・・・・加納さん。」

 にやにやと笑いながらそこに立っていたのは、間宮の側近である佐藤浩市似のヤクザ。加納だった。

「よう・・・。クリスマス・イヴは仕事なんやて?」

「・・・・・・・・・。」

「若頭の機嫌が、昨夜から最悪や。何とかならへんか?」

「無理だ。イヴはホントに人手が足りない。それに。・・・・・間宮には。他にいくらでも居るだろう?」

 加納は、右手を髪の毛に突っ込んで掻きながら苦笑する。

「・・・・分かってへんなあ。」

「何が、ですか?」

「若頭の気持ちがや。」

「・・・・・・・・・?」

「あんたの気を惹こうと、あれでも必死なんやで?」

「そんな、馬鹿な。」栞は笑った。そんなコトがある訳がない。

 

 誰よりも華やかで美しい間宮。

 どこに居ても。誰の前に立とうと。

 間宮が一番美しいと、栞は思っていた。

 そんな間宮が。栞なんかに。

「・・・。」

 栞は加納に向かって、苦笑してみせた。

 

 クリスマス・イヴ。

 栞は。店長を務めているコンビニで忙しく立ち働いていた。

 午後七時を過ぎた段階で。

 今日、間宮は誰と過ごしているのだろうか、とちょっと気になったが、スグ仕方が無いと諦めた。

 綺麗な間宮と。夜を過ごしたいと思う人間はたくさん居るだろう。

「・・・・・・・・。」

 栞は頭を振ると、商品の補充をするためにレジを出た。

 

 時刻は、午後11時を回ったトコロだった。

「寒・・・・・・。」

 客が途切れた一瞬を狙って、栞はゴミを出すために店の外に出た。

 気温はカナリ下がっているようだ。

 今日は、結局バイトが確保できず夜半の店員は栞だけだ。栞は急いで店に戻ろうとした。その目の隅に。

「・・・・・・・・?」

 赤いモノが映った。

 立ち止まって、振り返った。

 コンビニの前の駐車場の隅で。

 赤い服を着たサンタクロースがタバコを吸っていた。

(・・・・こんな所で?どっかのバイトが、休憩しているのかな?)

 栞はそのまま行こうとしたが、サンタクロースはタバコを投げ捨てると、彼の方に向かって歩いてきた。

「・・・・・・・・?」

 何か用でもあるのかと、栞も立ち止まる。

 サンタクロースは大きな男であった。背が高く足が長い。白い付け髭と眉毛で、顔は良く分からなかったが。

「・・・・・!!!間み・・・・っ。」

「俺は今日は、サンタさんや。」栞が名前を呼ぶ前にサンタクロースが、笑いながら言った。

「ど、どどどどどどど。どうしたんだ?一体、いつから・・・・?」

 栞はハッとした。白い髭に覆われていても、サンタの唇は紫色になっていた。

「ま・・・。間宮・・・。」

 思わず触れた腕も。凍りつくように冷たかった。

「一体、何時から居たんだ?入ってくれば良いのに・・・。」

「仕事の邪魔になるやろ?それに、絶対に一度は外に出て来る思うとったからな。」

「こんなに冷たい。何時間も待っていたのか?」栞は間宮の手を取ると、自分の両手で挟んで擦った。

「メリークリスマスや。栞。プレゼントを渡そう思うてな。」間宮は笑った。男らしいハンサムな顔。栞は大好きだった。

「間宮・・・・・・。」栞はハッとして尋ねた。

「フランス料理は・・・・?どうしたんだ?」

「・・・ムカついたけど、加納に譲ったったわ。何だか恋人が出来たらしからな。今頃は食事も終って、ホテルにでもシケコンどるやろ。」

 間宮は本当に憎々しげに呟いた。

「馬鹿だな。・・・・誰かと行けば良かったのに。」栞は困った顔で笑った。

「人間、恋すると馬鹿になってまうんや。」

 間宮は少し怒ったように、唇を尖らせた。

()れない恋人が相手やと、余計や。」

「・・・・・・・・。」

「イヴの夜を。アンタが他の男と過ごしとらんか、見に来たんや。自分で確認せんことには、心配で何も出来んわ。」

「・・・・馬鹿だな。」

「愛しとるんや。栞。」

「間宮。」

「『愛』って、ポカポカするもんやろ?」間宮は栞を腕の中に納めた。

「いや。冷たいぞ。間宮。」スッカリ冷え切った間宮に抱き締められた栞は、身体を微かに震わせた。

「ムードないなあ。俺はあったかいんやけどな。」間宮は栞を抱き締めたまま、笑った。微かな振動が栞にも伝わり、それは確かに何だか暖かいと、栞は思った。

「勤務は何時までや?」

「明日の夜の八時。」

「長いなあ。」

「人手不足だから。」

「ま。良えわ。その時間になったら、迎えに来るさかい。延長はナシやで。」

「間宮。」

「・・・・・俺、寒いわ。長い事外に居ったから冷えきっとるやろ?」

「・・・・中に入ろう。暖房が効いているから・・・。」栞は間宮の腕を取って、促した。

「いや。良え。今日はお前に会いに来ただけや。けど、明日の晩は。」

 間宮は意味有りげに、言葉を切った。

「・・・・・・・・。」

「栞が俺を、暖めてくれな?一晩中。」

「・・・・・・・・。」栞は不思議そうな顔で、間宮を見た。

「な?」

「・・・・・・・・良いけど。俺の部屋は電気ストーブしかないぞ?」栞は首を傾げて、呟いた。

「・・・・・そうやのうて・・・。ああ、もう。これやから。」間宮が両腕に力を込める。

「あ・・・・・。」

 その時。

 栞の視線は、コンビニに入っていくカップルを捕えた。

「お客さんだ。じゃ、これで。」

 栞は間宮の腕をもぎ離すと、慌てて駐車場を走って行った。残された間宮は。

「・・・・・・ほんま。ムードの欠片もあらへん。」

 溜め息とともに小さく呟いた。

 間宮は、午後6時から、ずっと駐車場に居た。栞が一所懸命働いているのを、ガラス越しに見ていた。それは、何故か、とても楽しかった。

「・・・・うー。さむっ。・・・・しゃあない。帰るか。」

 間宮がそう呟いた瞬間。コンビニの入り口から栞が出てきた。

 携帯カイロを手にしている。

「・・・・無いよりマシだろう?」

 栞はそれを間宮に渡した。

「クリスマスプレゼントや。」下手な大阪弁で、照れ臭そうに。それを聞いた間宮は、妙に真剣な顔で、栞を見ていた。そして。

「・・・・・・キスだけ。」

 いきなり栞の肩を掴んだ。

「え・・・・?じょっ。冗談じゃない。こんなトコロで・・・・。間み・・・っ!!!!」

 栞がそう叫んだ時は、既に間宮に抱き込まれていた。温かな舌が口腔を満たす。

「・・・・・好きや。」

 間宮の言葉は、確かに栞の心を温かなもので満たした。

「・・・・・もう行かなきゃ。」栞が赤くなった顔を隠すように俯いて呟く。

「・・・・・・・。」

「・・・・それじゃ。」

 そう言って、俯いたまま走り去る栞を、間宮は優しい眼差しで見ていた。

 

「ほなら。今日はヤル気でんな?」

 加納はにやにやと笑いながら、間宮を見た。

「当たり前や。何時までもオテテ繋いで寝てられるかいな。やから、今日の会合は、何が何でも7時には切り上げるさかいな。」

 間宮はコートに袖を通しながら、加納に断言した。加納は、心得ましたというように、頷く。そして。

「・・・・・ところで。クリスマスプレゼントは、栞に渡しはったんですか?」何でもないように、尋ねた。

「まだや。夕べ渡しそびれたさかい、今夜渡すわ。」

「そうでっか。」加納は、にっこりと微笑んだ。

「何や?」

「いや。別に。」

 加納は小さくわらって、出掛ける間宮のためにベンツの後部座席のドアを開いた。

 

「いらっしゃいませえ〜。」

 サスガに栞はヘロヘロになっていた。

 ほとんど仮眠らしい仮眠も取らずの30時間勤務である。今日は午後からバイトが二人入ってくれたので、大分助かったが。

「・・・・・大丈夫か?栞、へろへろやな。」

 入ってきたのは、加納だった。

「加納さん。」

「いや。クリスマスプレゼントを渡そうと思うてな。」

「えっ?いや、そんな。」

手下(てか)としては、姐さんには、付け届けを渡すもんや。そやろ?」

「姐さん?」

「良えから。」そう言うと、間宮は強引に栞の左腕に時計を嵌めた。

「か、加納さん!!」

「ちゃんと着けといてな。今晩、若頭と会う時にもチャントやで。」

 慌てる栞を尻目に、加納は笑いながら店を出て行った。

「・・・・・?」

 栞は何だか変だな、と思いながら無理矢理嵌められたその高級そうな腕時計を、どうすれば良いかと首を傾げた。

 

「どうしたんや!?その腕時計は!?」

 約束通り、午後八時に栞を迎えにコンビニの駐車場に現れた間宮のベンツの後部座席に栞が乗り込んだ途端。待っていた間宮が悲痛な声を上げた。

「え・・・・?これは。加納さんが・・・。クリスマスプレゼントだと言って・・・。」

「加納が!?」

 愕然としていた間宮は、それを聞くと、眉間に皺を寄せた。

「・・・・・・・。やっぱり。こんな高価なモノをもらうのは・・・。まずいよね。」

「そういう問題やあらへん。それは、加納の嫌がらせや。」

「嫌がらせ?」

「ちくしょう!!夕べ栞に渡し損ねた俺のクリスマスプレゼントも腕時計や!!!加納は、知ってて嫌がらせをしたんや!!!」

「な・・・。何でまた・・・。そんなコトを?」

「夕べ、栞を待っている間、ヒマやったんで、10分おきに加納の携帯に電話を掛けたったんや。デートを邪魔されて、ごっつう怒っとったからな。」

「・・・・・間宮。それって。自業自得じゃ・・・・。」

「まあ、良え!!栞。そんな安物。さっさとハズセ。俺のが全然高級品や。」

「・・・・・・・・安物って。何か、ブランド名が入ってるけど・・・。」

「そんなん。どうせバッタ物やバッタ物!!」

 間宮は強引に栞の左腕を取ると時計を外して、ご丁寧にベンツの窓を開けると、そこから投げ捨てた。

「ああっ!!!」

 栞が驚いて叫ぶ。

「良えんや。」

 間宮はそう言うと、栞の腕に自分が用意してあった時計を嵌めた。

「・・・・・・・。」

 間宮のコトだから、どんなキンキラした時計だろうと思ったが。それはサラリーマンが身に着けても可笑しくないような、地味な時計だった。

「近所のな。腕の確かな時計職人に作らせたんや。」

「間宮・・・・・。」

「耳に当ててみい。コチコチと良え音がするやろ?」

「・・・・・・・・・。」

 栞はそれを耳に当てた。確かに心が落ち着くような音が一定のリズムを刻んでいる。

「赤ん坊とかは、それをお母はんの心臓の音やと思うて、聞くと安心して眠るそうや。」

「・・・・・・・・・。」

「栞。それは、俺の心臓の音や。」

「・・・・・・・・・。」

「それを聞きながら。安心して眠り・・・。俺がいっつも傍に居る。」

「間宮・・・・・。」

「きっと。良う、眠れるで。」間宮は笑った。

「・・・・・・・・・。」栞は母親の夢のハナシを間宮にしたコトがあった。間宮は、覚えていたのだ。

「・・・・・・有難う。」栞はそう言うと、時計をもう一度自分の耳に近づけた。規則正しい、落ち着いた音。

「良えやろ?」

 間宮はそう言うと、栞を抱き寄せた。

「・・・・・・・・。」

 抱きこまれた耳が、間宮の左胸に当たっている。上質のスーツの生地の肌触り。心地良い間宮のコロン。そして。本物の心臓の音。

「・・・・・栞なあ。栞のお母さんは。栞が心配なんや。だから、夢に毎日現れるんや。いくら彼岸の人でも、毎晩は凄いキツイと思うで。」

「・・・・・・・・・。」

「やから。今度は夢の中で、お母さんに俺には間宮が居るから安心してくれと言うてみい。そしたら、もう会いに来はらんようになるんやないかなあ。・・・・って?おい?栞?」

「・・・・・・・・・。」

 栞は間宮の左胸に耳をつけたまま。静かな寝息を立てていた。

 無理も無い。疲れているのだ。ホトンド徹夜で働いていたのだから。

 間宮は栞の髪の毛を撫でた。そしてメガネを外してやりながら小さな苦笑を漏らす。

「・・・・やれやれ。今晩もあったかい思いはさせてもらえそうもないな。」

 丁度その時。車が間宮のマンションに到着した。

「・・・・・・・・・・。」

 後部座席のドアを開いた組員が、栞を間宮から受け取ろうとしたが。

「・・・・・・・・・・。」

 間宮はそれを制して、自分で栞の身体を抱き上げた。

 そして。栞を起こさないように細心の注意を払いながら、エレベータに向かった。

 

 

 間宮は知らない。

 

 この夜。栞の夢に、母親が現れないコトを。

 そして。この日以降は一度も現れることが無いコトを。

 

 栞が。

 この夜のコトを。生涯忘れなかったことを。

 この夜の間宮の温もりを永遠に忘れなかったコトを。

 

 この夜は。

 栞にとって、何にも変えがたい夜となった。

 振り返って、何度も思い出すような。

 大切で神聖な夜となった。

 

 「栞。ゆっくり眠れ・・・・。俺が見張りをしていてやるさかい。」

 間宮は、小さく呟いた。

 

fin−

 

 

 どうだっ!!甘かろう(笑)!!!!

 そうですね。ここから栞には普通のオジサンになってもらって、またビシバシいこうかな(←オニ)。

 期間限定の物語。喜んでいただけたなら、光栄です。