自慢のカレ
<9>

「・・・。」
 ヤマトは膝を抱えると大きな溜め息を吐いた。
(・・・何で、こんなコトになったんだ・・・。)
 眼前には、村のはずれ(・・・)にある、小さな溜め池。ヤマトはその岸辺に体育座りをして、顔を膝に埋めた。ここは、周りに何もない上に、景色が美しい訳でもなく、藪蚊の多いその場所には、滅多に村人が訪れることはない。
 幼い頃から、ヤマトは一人になりたい時はここを訪れた。泣きたいようなときに。

「・・・。」

 衝動的に、グリフィスをぶっ飛ばしてしまったヤマトだが。
『無防備な人間に手を上げるとは・・・っ!!』
 直後。鬼の形相の長兄リュウに、睨みつけられ(グリフィスはヤマトの足元に跪いていた)。
 ヤマトの行為に、卒倒してしまった村長(むらおさ)の姿を目の当たりにし。
 自分のしでかしたコトに震え上がって、一目散にその場を逃げ出してしまった。

(も、もし、村が滅ぼされたら、ヤッパ俺のせい・・・だよな。)
 グリフィスにはそれだけの権力(ちから)がある。
 そして、恥を掻かされたと感じた貴族は、それぐらいのことなら、平気でする。
「・・・。」
 ヤマトはもう一度大きな溜め息を漏らした。その時。
 ヤマトの背後の藪が、大きな音を立てた。

「ヤマト。」

 誰かが、ヤマトの名を呼んだ。
 一瞬、兄達の誰かか叱りに来たと思って、逃げ腰になったヤマトだが。
「・・・っ!!ケ、ケンイチ!?」
 そこに立つ人物に気付くと思わず腰を浮かした。背後に立つその男を、中腰のまま、まじまじと凝視してしまう。
 凝視(みつめ)られた、人物は、少しバツが悪そうに笑った。
「・・・その。・・・ほんとに、久し振り・・・。」
 ソレはかつて。
 婚約者だった幼馴染。
 ケンイチ・タイラーは、ハンサムな顔に、昔と同じ優しい微笑みを浮かべて、まるで眩しいものを見るようにヤマトを見た。


 ケンイチは、無言でヤマトの前まで歩み寄ってきた。そして。
「隣に座って良いか?」
 中腰で固まっているヤマトに尋ねた。ヤマトがぎこちなく頷いて座り直すと、ケンイチも静かにヤマトの隣に腰を降ろした。そしてもう一度、ヤマトを見て笑った。
「ここに居ると、思ったよ。」
「・・・っ。」
 ヤマトは顔を強張らせた。

 仲の良かった幼馴染。
 親の決めた婚約者同士ではあったが、まだまだ幼かったヤマトとケンイチには、そのようなことには意味が無く、ただ二人で無邪気に遊び回っていた。
 幼心にも、家族を除けば、お互いに一番大切で身近な存在だと思っていたと思う。
 あの頃は、互いのことなら何でも知っていた。
 ケンイチだけは、この場所(隠れ処)を知っていた。
 
 悪童たちに、ひらひらのピンクのスカートを執拗に揶揄(からかわ)れ、最後にはオカマ、オトコ女と罵られ石を投げられたヤマトが、逃げ込む場所を。

『ヤマト・・・。』
 母親が嬉しそうに(こしら)える可愛らしい少女用の服を。母亡き後に次兄のハルカが手を絆創膏だらけにして必死で創ってくれる可愛いピンク色のスカートを。
 着たくないとは言えなかったヤマトを。
『・・・。』
 今と同じように、膝を抱えて涙を堪えていたヤマトを。
 気が付けば、こうして同じように膝を抱え、隣に座っていたケンイチ。
『大丈夫。大丈夫』
 何が大丈夫なのか、幼い二人には分かっていなかった。ただそれは、ケンイチの母の口癖だったそうで、幼いケンイチはそれを真似て、ヤマトを慰めた。
『大丈夫。大丈夫。』
 そう言いながら、ヤマトの頭をケンイチは撫でた。
『ヤマト。ダイジョウブ。』
 ケンイチが居たから、あの頃ヤマトは耐えられた。永遠には続かなかったけれども。愛とか恋とかはまだ、分からなかったけれども。ヤマトはケンイチが大好きだった。
 婚約が破棄され、どんどん疎遠になっていくケンイチを。もうこの場所を訪れ、頭を撫でてくれなくなったケンイチを。
 ヤマトは確かに恋しく思っていた。
 大丈夫。――――――
 誰も言ってくれなくなったその言葉だけは。それから数年間ヤマトの口癖となり、彼を慰め続けてくれた。


「・・・本当に。久し振りだね。」
 ケンイチは、もう一度呟いた。
「・・・。」
 ヤマトは。何も答えずにケンイチを見た。婚約を解消してからは、碌に話をすることも無くなった男が、今ここに姿を見せた真意を図りかねていた。
 そんなヤマトを見て、ケンイチは苦笑したようだった。そして。
「・・・何だか。タイヘンなコトになっちゃったな。・・・お貴族さまか・・・。」
「・・・っっ!!」
 ヤマトは赤くなって俯いた。
「あれって・・・。あのプロポーズって。・・・本気なんだよな・・・?」
 ケンイチはヤマトの顔を覗き込む。
 ヤマトはますます赤くなった。そして。
あのヒトは、頭がオカシイんです・・・。
 小さな声で呟く。
「・・・。」
 ヤマトの応えを聞いて、ケンイチは小さく声を立てて笑った。そして。
「今日は、一生分くらいのヤマトの色んな表情を見せてもらえるな。赤くなったり青くなったり・・・。ずっと岩みたいだと言われてきたのが、嘘みたいだ。」
「・・・。」
 ヤマトは首を傾げた。
 本人としては自覚はないが、確かにグリフィスと関わるようになってから、ビックリすることや怒髪天を突くような出来事が次々よ起きて、ついつい我を忘れてしまうことが多い。時分は、そんなに赤くなったり青くなったりしているのだろうか、と首を捻る。
「・・・あの貴族の、力なんだね・・・。」
 ケンイチの声の調子が、ふいに変わったように思った。
「・・・?」
 意味をはかりかね、ヤマトは大きく目を見開いてケンイチを見た。それにチラリと目をやって、ケンイチは自嘲気味に呟いた。
「俺には、無理だった・・・。苛められているお前を、助けることすら、出来なかった・・・。」
「え・・・?」
 膝の上に置かれたケンイチの握りこぶしが、微かに震えるのを見て、ヤマトは眉を潜めた。
 ヤマトに対するイジメが酷くなったころ、もうケンイチはヤマトの傍には居なかった。仕方の無いことだというのに、ケンイチはずっと気に病んでいたのだろうか。そんな必要は、まったく無いというのに。
「・・・。」
 ヤマトはケンイチに掛ける言葉を捜して、瞳を彷徨わす。
 だが一瞬の後、ケンイチは声を明るい調子に転じて、話を続けた。
「子供の頃は・・・。ずっと無邪気に信じてたな。お前が嫁に来るんだと。そしたら、誰にも怒られずに、夜遅くまでずっと一緒に遊べるんだと。」
「・・・。」
 今更何を言い出すのかと、ヤマトは益々目を見開いて、ケンイチを見る。話の展開についていけない。
「俺は。お前は、俺の嫁になると、信じていた・・・。」
「・・・。」
「だけど、そうはならなかった。」
 その言葉に、どこかヤマトを責めるような響きを認めて、ヤマトは困惑するしかなかった。
 婚約の解消はケンイチの家からの申し出であったし、家同士の話し合いで決まった。ヤマトの立場では、拒否出来る訳もない。
「ヤマト。俺な・・・。」
 言葉を発しないヤマトに困ったように、ケンイチは話し始めた。
「本当はあの時・・・。俺は婚約を解消なんかしたくなかったんだ。」
「え・・・っ!!」
「ある日。母が言ったんだ。本当に突然。[このままでは、ケンイチが可哀想だ]と。」
「・・・。」
 そうだ。
 ヤマトも聞いた。彼女が兄達に向かって、何度もその言葉を繰り返すのを。正直、胸が痛かった。
「俺には何のことだか、さっぱり分からなかった。だけど。」
 ケンイチは言葉を切ると、辛そうにヤマトを見た。
「[ヤマトはいい子だけれど、女の子じゃない]。そう言い切る母に、俺は何も言えなかった。」
「・・・。」
 ヤマトはケンイチから目線を外した。
 そう。俺は、オンナじゃない。唇を噛み締める。
「何だかドンドン話が進んでしまって・・・・。だけど俺は、俺が何も言わなくても、きっとヤマトが拒んでくれると思っていた。だって俺たち本当に仲良かったし、ヤマトは俺のことを好いていてくれると信じていたから。だけど・・・。」
「・・・。」
「結局、婚約は解消されてしまって・・・。俺は、ヤマトに腹を立てた。ヤマトは俺の嫁になるのが嫌になったんだと。」
「・・・そんな・・・。」
 ヤマトは思わず声を上げた。
 婚約解消を求められて、ヤマトの立場で拒める訳がない。
「・・・うん。そうだよな。本当は、そういうコトじゃ無かったんだよな。今なら分かる。オトナは俺たちの言葉を誰も聞いてくれなかっただけだったんだ。」
「・・・。」
「俺の気持ちも。ヤマトの気持ちも。」
「・・・。」
「・・・ごめん。アレからずっと、無視してゴメン。理不尽に、恨んでしまって、本当にゴメン。」
「・・・。」
「ずっと・・・。ヤマトに謝りたかったんだ。」
「・・・いや。それは・・・。」
 気にするな、と言い掛けて、ヤマトは言葉を切った。
 突然、自分に背を向け始めたケンイチに、あの頃ヤマトは確かに傷ついた。
 婚約解消を言い出したケンイチは、他の村人と同じようにヤマトを気味悪く思い始めたるのだと思い、辛かった。だから、無理して話し掛けようとは思わなかった。
 ヤマトは首を振った。
 もう終わってしまった遠い過去。もはや、どうにも出来はしない。自分たちは子供だったから、色んな誤解を解くことが出来なかったのではない。ヤマトだったから。自分が臆病だったから、色んな辛いことが起きたのだ。
「・・・。」
 ヤマトはふいに笑った。
 もし自分の立場にグリフィスが置かれたら。あのオトコだったなら、どんな人生を送っただろう。
 あの凄まじいバイタリティで、きっと運命そのものを捻じ伏せ従えたに違いない。どこで生きようと、どんな立場だろうと、グリフィスはグリフィスだ。
 その様を思い描き、ヤマトは微かに笑った。
「・・・ヤマト・・・?」
「あ・・・。」
 気が付けば、ケンイチが訝しげにヤマトを見ていた。
「いや、何でもない。ただちょっと・・・。」
 ヤマトはもう一度笑った。そして。
「何でもない。有難う、ケンイチ。」
 本当に素直な気持ちで。ヤマトはケンイチをしっかりと見詰めて、そう言った。

 ケンイチはそんなヤマトを、眩しそうにもう一度見詰め。
「何だか変わったな、ヤマト。騎士団に入団する前とは・・・。」
「そうかな。」
「そうさ。あの貴族のおかげかと思うと、それはそれで、何だか悔しい気もするけどな。」
「・・・なんで?」
 ヤマトの問いには答えず、ケンイチは明るく笑った。そして。
「・・・俺、来年になったら、エリと結婚することにした。」
 吹っ切ったように、そう言った。
「え・・・?エリと・・・!!」
 エリというのは、ケンイチやヤマトの同級生。大人しくて、でも芯の強い少女だった。華やかなナツメたちとは、一線を引いていたような印象がある。
「ああ。あいつは、お前を庇ったとはいわないが、少なくともナツメと一緒になって苛めはしなかったしな。」
 ヤマトは苦笑した。ケンイチがそれほど自分を気にかけてくれていたとは、思いもしなかった。
「・・・きっと良い奥さんになる。おめでとう、ケンイチ。」
「ありがとう。本当は俺の結婚は、ヤマトの幸せを見届けてから、と思っていたんだが。エリにもう待てない、嫁かず後家にする気かとせっつかれて。お前も騎士団に入団して、エリートの道を歩き始めたことだし、ていうんで、春に正式に申し込んだんだ。・・・だけどな。」
「・・・?」
 ケンイチの声の調子がまた、変わった。ヤマトは訝しげに彼の顔を見る。
「だけど、お前が村に帰ってきて。・・・何だか、とても辛そうに見えて・・・。」
 ケンイチは眉間に皺を寄せて、ヤマトを見返した。ヤマトは驚いた。ケンイチは本当にヤマトのことを気にしてくれていたようだ。
「正直、迷っていた。」
「え・・・?」
 何を?
 と訊こうとしたヤマトを遮るように、ケンイチはまた話題を変えた。


「・・・あの方とは。騎士団で知り合ったのか・・・?」
 グリフィスの名は出さずに。ケンイチが訊いた。
 一瞬、戸惑ったヤマトだが。
「ああ・・・。ひょんなことで、身体の秘密を知られてしまって・・・。」
 言い掛けたヤマトの言葉に重なるように。
「・・・!!脅されたのかっ!!」
 ケンイチの言葉が降ってきた。
「え・・・?」
 ヤマトは訳が分からず、ケンイチを見た。
 ケンイチは形相を一変させて、ヤマトを見ていた。ヤマトが一度も見たことが無いような、剣呑な表情。
 噛み締めた唇から、低い声が漏れた。
「騎士団には、女性は居ない。性欲処理に・・・っ!!」
 瞬間。
「・・・っ!!!」
 ヤマトは目の前が、真っ赤に染まった。

「ヴァロア公は・・・っ!!そんな愚劣なオトコでは、無いっ!!」

「・・・ヤマト。」
「・・・っ!!」
 ヤマトは唇を振るわせた。
 まるで淑女に対するように。
 ヴァロア公は、常にヤマトを扱ってくれた。
「・・・っ!!」
 何の価値も無い平民を。
 椅子を引き。馬に乗せ。そして大事な剣を・・・!!
「ヴァロア公は・・・っ!!!」
 アトは言葉にならなかった。
「・・・。」
 ケンイチは。
 ヤマトをじっと見ていた。
「・・・。」
 そして。おもむろに。
「・・・相思相愛か・・・。」
 小さく呟いた。
「俺の出る幕は、無さそうだ。」
「え・・・。」
「悪かった。ヤマトの大事なヒトを悪く言って。」
 ケンイチはそう言うと、ヤマトの肩を二度叩いた。
「えっ!!ち・・・違・・・!!」
「ナツメに聞いたよ。[自慢のカレ]なんだろ?」
「!!!」
 蒼白な顔で、必死で首を振るヤマトを見て、ケンイチは大きな声で笑った。そして。
「ヤマトは可愛いなあ。こんなに色んな顔が出来たんだなあ。」
 そう言うと、ふいにヤマトの身体を引き寄せ、ハグした。
「・・・。」
 ビックリして固まっているヤマトの背中をポンポンと二度叩くと。
「初恋に、さよならだ。」
 そう呟いた。
「初恋・・・?」
「俺の初恋はな。」
「・・・。」
「近所に住んでいた、岩に似ていると皆に言われていた()だったんだ。」
「・・・!!」
「幸せにしたいと・・・。誰にも、苛めさせないほど、強くなりたいと・・・。俺は、ずっと本気で願っていた。」
 ケンイチの腕に、力がこもる。
「・・・ケンイチ・・・。」
「・・・ごめん、な。」
 何に対しての謝罪なのか。ヤマトには、正直分からなかった。だが。
 ヤマトは、ケンイチの背中に手を回して、頭をケンイチの肩に乗せ。
「・・・ありがとう。」
 心を込めて、そう呟いた。


 その時だった。


「何を。している!?」

 誰が聞いても不機嫌だと分かる怒鳴り声が。
 辺りに轟き渡った。

「・・・!!」
 聞き慣れた、その声に。
 ヤマトは弾かれたように、顔を上げた。

「・・・貴様・・・。」
 銀色の髪に金の瞳。
 他人の目を惹きつけてやまない男。
 その男が。歯さえも美しいその男が。その歯をぎりぎりと言わせながら、抱き合う二人を見ていた。
「貴様・・・。俺の妻になるオンナに、何の真似だ・・・・。」
 次期ヴァロア公グリフィスは。怒りを隠そうともしないで、その美しい姿に相応しい尊大な仕種で、二人を見下ろしていた。
「えっ!!あっ!!つっ、つまっ!?」
 ヤマトはうろたえた。自分の態勢にも。グリフィスの言葉にも。
「・・・二人きりで身体に触れるとは!!俺に手袋を投げたと思っても、良いな!?」
「て・・・手袋?」
 ケンイチが、少し間抜けな声を出した。
「決闘を申し込んだということだ!!違うと言うなら、俺が貴様に決闘を申し込む!!」
「はいいっ!?」
 今度はヤマトが間抜けな声を出す番だった。

「何を馬鹿な・・・っ!!」
 ヤマトはケンイチを突き飛ばすようにして、立ち上がった。グリフィスと対峙する。
「お前もお前だ!!俺の妻になる自覚が無さ過ぎる!!」
「・・・っ!!俺は、オンナじゃないと、何度言えば・・・!!」
「だが、お前はオンナとして。俺に抱かれただろう。」
「なっっっ!!」
 ケンイチの視線が、頬に痛い。
 すっかり忘れていた。
 デリカシーなどというものは、この男(グリフィス)の中には存在しなかった。
「排卵日は、いつなんだ?」
「・・・!!」
「妊娠している可能性は、無いのか?」
「!!!」
 こ・・・っ!!殺してやるっ!!
 羞恥で真っ赤になった顔で、ヤマトは明確な殺意を抱いた。震える声で呟く。
「上等じゃねえか・・・。」
「なに?」
 グリフィスが首を傾げた。
 ヤマトは、叫んだ。
「上等じゃねえかっ!!その決闘、俺が受けてやるっっ!!!」
 グリフィスが、ポカンと口を開けた。
 ちょっと変な顔で、自分を睨みつけるヤマトを見詰めた。
 それから小さく咳払いをすると。
「・・・お前が受ける筋合いでは無い。というか、受けてどうする・・・。」
 小さくそう呟いた。
 それはその通りだ。だが、ヤマトは引くつもりは無かった。
「・・・ケンイチは本職が、コックだ!!料理の腕を競うとでもいうのか!?」
「料理・・・?」
 当然ながら、名門貴族のお坊ちゃまであるグリフィスに、料理が出来るわけがない。
 それに、そんな決闘など、聞いたことも無い。
「卑怯ダロウ!!ケンイチは剣を握ったこともホトンド無い!!それなのに、ソレに命を掛けろというのか!!」
「・・・。」
「だから、俺が受けます。決闘を。」
「・・・。」
 グリフィスは途方に暮れたように、空を見上げた。
「・・・それとも。怖いんですか、俺が。」
「何だと。」
 グリフィスの目に、瞬時に剣呑な光が宿った。
「俺は。自分より弱い男を、亭主に持つつもりは無い。」
 ヤマトは。
 敢えて侮辱的な言葉を口にした。
 グリフィスに自分を諦めさせるには、それしかないと思った。
 グリフィスのその他大勢の妾にはなれない。
 ヤマトは。そう思った。

「・・・けっこう男尊女卑なんだな。」
 次期ヴァロア公グリフィスは。
 溜め息を吐きながら、ゆっくりとそう呟いた。



−to be continued−

2007.09.21

 いやはや。しっとりとケンイチ君が話を進めていたというのに。グリフィスが出張ると、何でこうなるかな(笑)。
 次回はいよいよ二人のタイマン(笑)です!!
 剣に関しては、勿論ヤマトが強いですが。どうですか、総合的に考えれば。ヤマトが一撃でグリフィスの息の根を止めたまら別ですが、無理だろうなあ(笑)。
 前からの懸案事項だったフォント文字関連ですが。
 丁寧にソースから指導して下さる方が居て、一部分ではありますがこの頁のみ修正しました。本当に一部ではありますが、多少の改善が出来ていれば、嬉しいです。

 葛之葉さま。有難うございました。
 

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